納得のいかないクマの報道ランキングTOP10

哺乳類
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今年(2025年)はクマによる人的被害が増加傾向にあり、クマに関する報道が爆発的に増えています。
その中には明らかに事実を伴わない、あるいは事実誤認している報道も多く、動物に詳しい人間からするとイライラの募る状況となっています。
ということで、クマに関する報道で個人的に納得のいかなかった記事をランキングにしてみました。

10位:クマの被害増加はメガソーラーのせい?

クマの市街地出没、SNSに目立つメガソーラー原因説「すみか奪ってる」「クマ被害増加」
北海道や東北地方を中心に相次いでいるクマの市街地出没を巡り、山中に造られた大規模太陽光発電所(メガソーラー)の影響を指摘する投稿がSNSで目立っている。こうし…

クマの被害について、近年、乱開発が進むメガソーラーと関連して報道されるケースがあります。
メガソーラーの問題は問題としてありますし、クマ被害との関連も0でないかもしれません。
しかし、この手の記事は、メガソーラーに反対したい人がクマ被害にかこつけて書いているだけのように感じます。

9位:体重160kgを超えるツキノワグマが出没?

クマ対策の最前線 高い学習能力との攻防戦
体重160キロを超える巨大なツキノワグマ。餌(えさ)を求め人里に活動範囲を広げています。一方で高い学習能力を活かし、巧妙にわなをよけるクマも。

クマについて体長や体重を強調した報道も多く、数字だけがひとり歩きしているケースもよく見受けられます。
特に体重については、注意が必要です。
上記のリンク先にある動画を見れば一目瞭然ですが、体重160kgと紹介されているツキノワグマはめちゃくちゃ太っている(妊娠している?)個体で、ツキノワグマの体重として紹介するのに適切とは思えません。
基本的にツキノワグマは、冬眠をする際に体重の増加がある(早い話が太る)ものの、人間と同サイズの生き物で、決して巨大な動物というわけではないのです。

※北海道に生息するヒグマには、人間よりも遥かに大きい個体がいます。

8位:クマが泳ぎを覚えた?

泳ぐ“黒い何か”に漁師「海でクマとは…」 猟友会が漁船に乗り込み海上で駆除(2025年11月15日掲載)|日テレNEWS NNN
青森県・陸奥湾の海上に、黒い何かが浮いているのがわかります。カメラがとらえたのは、クマでした。

北海道に生息するヒグマが陸奥湾を泳いでいたと、衝撃的に報道されたことがありましたが、この報道には、そもそも地上の動物は泳がないという固定概念が背景にあるものと思われます。
しかし、以前紹介したようにシカが10km以上泳いだ例もあり、地上の動物は思った以上に泳げる生き物なのです。
泳ぐのが苦手なのは人間のほうであり、その価値観で泳ぐクマについて報道することには若干の違和感を覚えます。

7位:クマの被害についてアメリカ大使館も注意喚起?

クマ被害で注意喚起 在日米大使館:時事ドットコム
【ワシントン時事】在日米大使館は12日、北海道や東北地方でクマ被害が増えているとして、日本に滞在する米国人に注意を呼び掛けた。出没情報があった地域での単独行動を避けるほか、目撃した際は地元当局に通報するよう促している。

いくら日本でクマの被害が増えているからといって、他の国の人にまで注意喚起するようなレベルではありません。
日本に住んでいるほぼ100%の人は、野生のクマに出会ったことはおろか見たことすらないのですから、大使館による注意喚起はさすがに過剰な反応かと思います。
ちなみに、1952年から2023年までに在日米軍関係者によって1,101人の日本人が命を落としているそうなので、アメリカ大使館はアメリカ人に日本のクマが危険だと注意喚起するよりも、日本人に在日米軍が危険だと注意喚起したほうがいいのかもしれません。

6位:ヒグマが11歳の少女を襲った?

遺体の両目は飛び出し、顔面はグジャグジャ…札幌に現れ、幼児含む4人を食い荒らした「最悪の殺人グマ」の正体 腹を空かせて凶暴化する「穴持たず」の恐怖
人間を襲う凶暴なクマにはどのような特徴があるのか。ノンフィクション作家・人喰い熊評論家の中山茂大さんは「何らかの理由で冬ごもりしない『穴持たず』と呼ばれる個体には、注意したほうがいい。明治時代の北海道で死者4人、負傷者1人を出した『札幌丘珠...
「両足の肉がほとんど食い尽くされていた」留守番中の11歳少女を襲った「1904年のヒグマ襲撃事件」の惨劇 | 文春オンライン
必死の捜索の末に見つかったのは……。1904年、北海道下富良野村で起きた「下富良野少女ヒグマ襲撃事件」。突如、ヒグマに襲われた留守番中の11歳少女はどうなってしまったのか? 明治、大正、昭和、平成、…

2つの報道機関が今年の秋にヒグマにより少女が襲われた事件を報じましたが、中身を見てみると、明治時代に起こった同じ事件のことが書かれていました、
そんな昔まで遡れば、どんなことにだってひどい事件が見つかるのではないでしょうか?
逆に明治時代まで遡らないと、クマによる人間の子供への残虐な事件は見付からないということなのかもしれません。(有名な三毛別のヒグマ事件は大正時代の話だが)
さすがにこのタイミングで、はるか昔のクマ被害の事例を取り上げるのは、クマの危険度を無理に煽るための報道であると指摘せざるを得ません。

5位:クマの個体数が3倍に?

専門家「かなり切迫」どうする北海道のクマ管理「30年前の3倍」あなたはどう思う?(2024年3月25日掲載)|STV NEWS NNN
北海道内ではクマが出没する時期となっていますが、近年のクマの個体数は30年前の2倍以上となっています。

ヒグマに限らず、日本のクマが増えたという報道がよく見られるようになってきました。
中には、クマの生息数が何十倍にもなっていると主張をする人までいます。

話は変わりますが、近年、地震の揺れで震度7などといった大きな揺れを観測するケースが増えていると思いませんか?
実際に、震度7は1995年の兵庫県南部地震(阪神・淡路大震災)で初観測して以降、2004年の新潟県中越地震、2011年の東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)、2016年の熊本地震、2018年の北海道胆振東部地震、2024年の能登半島地震で観測しています。
これは地震の揺れが大きくなったのではなく、震度計の設置場所が増えて、より細く震度が調べられるようになったことが主な原因なようです。

動物の調査も同じで、技術的な発展によりクマの発見例が増え、推定頭数が昔よりも増加傾向になっている可能性があるのです。
クマの頭数については、以前から違和感がなかったわけではありません。
2022年に書いたツキノワグマに関する記事で、2020年に実施されたツキノワグマに対する約6,000頭の殺処分は、推定生息数14,000頭に対して多すぎるのではないかと指摘しました。
しかし近年のツキノワグマによる被害件数を見ると、このときの殺処分の影響が大きくないことがわかります。
本来、生息数の半数に近いような殺処分をしたら、もっと大きな影響が出ないとおかしいはずです。

このことから、ツキノワグマの過去の推定生息数が少なく見積もられていた可能性が高くなっています。
2022年の記事で利用した推定頭数のデータが2011年に発表されたものと古かったのですが、その点を踏まえてもおかしい点を感じます。
同じ記事の中で、日本に生息する他の大型哺乳類の推定頭数も紹介しましたが、どれも近年の推定頭数と比べて総じて少なめで、推定頭数が全ての動物で不正確だった可能性が高いのです。

おそらく日本のクマが増加傾向にあることは確かでしょう。
しかし、何倍とか何十倍というのは大げさで、過去の生息数が少なく見積もられていたため増加傾向が際立ってみえるだけなのかと思います。
もしクマに関して確実に何倍も増えたことがあるとするのなら、それはクマに対する過剰な報道なのではないでしょうか?

4位:クマが凶悪化してる?

「クマ凶悪化」専門家が指摘 成田悠輔さん「こんなにクマが出てくるようになった理由わかっているのか」
温泉旅館やJR駅構内など人が多いところにもクマが出没、街に住む人たちも安穏としていられない。2025年11月10日放送の情報番組「ゴゴスマ」(TBS系)は東北地方を中心に相次ぐクマ被害を取り上げ、経済学者の成田悠輔さんが「こんなにクマが出て...

これは、つい先日起きた事実ですが、私はオンラインゲームのレアアイテムを獲得するイベントに、メインとサブの2つのアカウントを使って参加しました。
結果、メインのアカウントは1個、サブのアカウントは10個のレアアイテムを獲得します。
同じ出現率のレアアイテムなのに、獲得する数に10倍もの差が出たということです。
オンラインゲームをする多くの人は、こういった経験があるのではないでしょうか?

クマ被害の死者数についても同じことで、クマの危険度に一切の変化がなかったとしても、被害に大きな差が出る可能性は十分にあるのです。
これは、クマによる被害件数が少なすぎて、偏りの是正が足りていないために起きる現象です。
仮に、クマの被害件数が10,000件もあれば、増減を計る指標として正確に使えるのでしょうが、現在起こっているレベルの被害数では急増や急減は起こりやすく、メディアがいちいち一喜一憂することが正しい反応とは思えません。
もちろん、何らかの要因でクマの危険性が上がった可能性も0ではないですが、現在起こっているクマの被害は、たまたま増えたという理由でも十分説明ができてしまう程度の差でしかないということです。

3位:クマの被害は災害級?

クマ被害の急増 専門家に聞く:「もはや災害級。個体数の削減に全力を」
クマの大量出没に伴う人的被害の多発が日本社会を揺るがしている。特に北東北3県の被害はパニックを起こすほど深刻だ。国立研究開発法人・森林総合研究所東北支所(盛岡市)で動物生態遺伝チーム長を務める大西尚樹さんは「この秋の状況は災害級」と指摘する...

この報道では、クマの被害が激増して災害級になっているとのことです。
どういったレベルの被害が災害級なのか分かりませんので、クマによる被害が多かった2023年を基準に、日本で起こった様々な事象での年間死者数をいくつかピックアップして紹介したいと思います。

平地での転倒:9,959人
浴槽内での溺死及び溺水:6,885人
食べ物による喉の詰まり:4,620人
交通事故:2,678人
自然化の高温曝露(熱中症):1,651人
自然化の低温曝露(凍死):1,354人
火災事故:1,004人
交通事故を除く事件:608人
水難事故:465人
ハシゴからの転落:161人
農業用機械との接触:67人
木からの転落:22人
有毒動植物との接触:21人
スズメバチ等との接触:21人
食糧不足(餓死):20人
椅子からの転落:19人
毒ヘビ類との接触:7人
クマとの接触:6人

これを見れば明らかですが、クマによる被害で亡くなることは、椅子から転んで亡くなるよりも珍しいレアケース中のレアケースなのです。
同じ動物被害のスズメバチや毒ヘビと比べてもクマによる死者数は少なく、今年の死者数が増えている点を踏まえても決して多いとは言えないレベルです。
もちろん、この程度の被害が災害クラスなわけがありません。
早い話、クマに対する注意喚起をするぐらいなら、転ばないように注意喚起したほうが、よっぽど人命を守るのに効果的ということです。

2位:ヒグマとツキノワグマのハイブリッドが誕生?

「ヒグマとツキノワグマの悪魔合体が起きている」…!いま秋田の猟師たちが恐れる「最凶のハイブリッド熊」の正体
高橋さんは、声を上げる余裕もないまま一目散に逃げだした。記憶に残っているのは、後方から聞こえる「助けて」という警察官のか細い声と、自分を追い越して逃げる消防隊員たちの姿だ。

これは去年の記事ですが、今年の過剰なクマに関する報道以降、SNSでヒグマとツキノワグマが交雑したハイブリッド種についての意見が多数見受けられるようになりました。
しかし、ヒグマとツキノワグマは500万年程前に同一種から分離したとされており、生息域が重なるロシアでも自然化での交雑はほぼ100%なく、飼育下でもまず交雑しないとされています。
ヒグマとツキノワグマの交雑などという話は、漫画などの創作物の話でしかないのです。
ちなみに、人間とチンパンジーの分離も、およそ500万年前とされています。

1位:クマが人間の味を覚えた?

「これから5年で倍増する」の衝撃…専門家が語るクマ被害「全国で8万頭&人間の味を学習」の悪夢 | FRIDAYデジタル
クマ被害が過去最多。専門家は「全国8万頭」「5年で倍増」と警告する。「人間の味を学習した」クマの悪夢は現実か。なぜ増えたのか、今すぐ必要な対策を徹底解説。
「人を食べる習慣を持つクマが増えている」全国的に増えるクマの人的被害「明らかに局面は変わった」と識者 市街地中心部、マンションや地下鉄駅前にも出没 | 国内 | ABEMA TIMES | アベマタイムズ
市街地でクマによる人的被害が相次いでいる。今年度は9月末までに108人が被害に遭い、過去最多となる9人が亡くなった。かつては森林に囲まれた町や村に出るものとされていたが、状況は大きく変わり市街地の、しかも中心部にまで出没するようになった。全...

仮にクマが人間の味を覚えたとしても、それは1個体だけの話で、クマの中で広く共有されることはないはずです。
そもそも人を襲ったクマは殺処分されているのですから、クマの中で人を食べることなど広がりようがありません。
アベマタイムズの記事では“人を食べる習慣”とまで書かれていますが、過去最高となった今年のクマによる死者数ですら10数件で、その死者ですら全て食べられたわけでもないのに、クマに人を食べる習慣がついたと主張するのは無理がありすぎます。
こんな嘘に等しいレベルの報道をするぐらいなら、一層のことクマが超能力を使えるようになったとか、クマは宇宙人だったとか言ったほうが、まだ話のネタになるのではないでしょうか?

追記(クマに対する顕著な過剰報道例)

上記の動画は、兵庫県のテレビ局(放送エリアは兵庫県と大阪府の全域)が放送したクマ(ツキノワグマ)に対する特集です。
兵庫県はクマの対策が成功しており、動画内(4分44秒頃)でも示された通り人身事故が2023年に0件、2024年に2件、2025年に1件と、年平均1件程度しか起きていません。
念のために言っておきますが、この件数はあくまで人身事故の件数であって死亡事故の件数ではありません。(兵庫県内でクマによる死亡事故は近年起こっていない)
ですので、クマ対策の成功例として報道するのなら理解できるのですが、動画の内容を見ると注意喚起のニュアンスが強くなっています。
人口がそれなりに多い兵庫県(人口の多い都道府県ランキング7位)で年に1件程度しか起きない事故に対し、10分以上の特集を組んでテレビ放送するのは明らかに異常な報道です。
そして、動画の最後では人命を守るように注意していきましょうみたいな話で締められているのですが、県内で年に1件程度しか起きないような事故に対して注意しながら生活するなんて、非現実的なのではないでしょうか?
そんなことを言い始めたら、上空から何かが落ちてくるかもしれないのでヘルメットを付けて外出したほうがいいでしょうし、どこかから有毒なガスが漏れてくるかもしれないのでガスマスクをつけて生活をしたほうがいいでしょう。

このように、クマの被害については実際に起きている被害と報道の内容及び報道時間の長さがあまりにもアンバランスなのです。

おまけ

最後に、東北地方を中心に今年大きな被害を与えた最凶動物・ツキノワグマの危険極まりない動画を紹介します。

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