以前、ツキノワグマによる人への被害や、それに関わる問題を記事にしましたが、相変わらずクマの出没が止まらないようです。

その原因について、ここ数年の環境変化を考えてみます。
最近の環境変化と言って1番に思い浮かぶことは、夏の極端な暑さです。
この暑さの原因は解明されていませんが、1番有力視されているのが海流の一時的な変化(黒潮続流の大蛇行)だそうです。
その海流が今年戻ったらしいので、来年辺りから極端な暑さは和らいでいくのかもしれません。
それ以外に山間部におけるメガソーラーの乱開発などが考えられますが、そういった話は私の専門外なのでここまでとします。
私がクマの被害に関して気になることは、未だに多くの日本人がヒグマとツキノワグマを混同している点です。
以前に書いた記事では、ツキノワグマは基本的に草食であり、大きさ(重さ)も人間と同程度であるため、ヒグマと同様に危険視されている現状に疑問を呈しました。
このヒグマとツキノワグマの危険度を比較するため、クマによる人的被害のデータを示しますが、まずその前にヒグマとツキノワグマの動物的な違いを御覧ください。
ツキノワグマ

- 【体重】
- 40kg~120kg(冬眠するため季節による体重変化が激しい)
- 【学名】
- Ursus thibetanus
- 【分類】
- ネコ目クマ科クマ属
- 【国内生息域】
- 本州、四国
ヒグマ

- 【体重】
- 120kg~400kg(冬眠するため季節による体重変化が激しい)
- 【学名】
- Ursus arctos
- 【分類】
- ネコ目クマ科クマ属
- 【国内生息域】
- 北海道
それでは、データが残っていた2008年から2024年までの17年間におけるツキノワグマとヒグマの被害状況を示します。
| 種別 | 被害件数 | 被害者数 | 死者数 |
|---|---|---|---|
| ツキノワグマ | 1520件 | 1647人 | 26人 |
| ヒグマ | 55件 | 65人 | 15人 |
このデータから計算すると、
ツキノワグマの事件あたりの死者数は1.71%(被害者あたりの死者数は1.58%)
ヒグマの事件あたりの死者数は27.27%(被害者あたりの死者数は23.08%)
で、大きな差があることがわかります。
ツキノワグマの死亡率も決して低いとは言えないのですが、被害に遭うと20%以上の確率で亡くなってしまうヒグマと98%以上の人が一命を取り留めるツキノワグマの危険性を同列に扱うのは無理があるのではないでしょうか?
ヒグマが危険であるとの報道には理解を示しますが、ツキノワグマをヒグマと同じような危険動物であると誤認させるような報じ方には疑問を呈さざるを得ません。
そもそも上記のデータから判明したクマの被害数は年平均92.7件です。
その割に、メディアはクマの被害を報じすぎているように思います。
2024年の交通事故は人身事故だけでも290,895件で、そのうち死者数は2,663人です。
死亡率は0.92%となり、ツキノワグマによる被害の死亡率と比べてそこまでの大差はありません。
にも関わらず、ツキノワグマの被害をメディアで報じる割合と交通事故の被害をメディアで報じる割合には大きな差があります。
こういったことがツキノワクマを必要以上に危険な動物であるとのイメージを植え付け、ヒグマと同レベルの危険度と勘違いする人が多くなっている原因だと思われます。
年平均で3件程度しか発生していないヒグマの被害についても、発生頻度の割にやたらとメディアで報じ危険性を煽っているように感じます。
そもそも北海道や東北北部で起こったクマの被害を東京のテレビ局が繰り返し放送し、都心部で暮らし野生動物の知識もないであろう出演者が議論をして何の意味があるというのでしょうか?
そんなに熱心にクマの被害を報じるのなら、年1,000件程度発生する殺人事件(未遂を含む)を報じたほうがメディアの役割を果たせると思います。
そして、ここまでクマの被害が近年増えている体で記事を書いてきましたが、実は上記で示した2008年から2024年までの統計上、クマの被害はほぼ横ばいで特別増えていることはないのです。(2023年だけが異常に多い)
ヒグマの場合は、被害件数が少なすぎて増減の判断をすることすら難しいレベルと言えます。
クマの被害が最近増え続けているとなんとなく感じている人が多いと思うのですが、少なくとも昨年までは顕著な増加傾向はなく、それ自体が間違った情報ということです。
クマの被害に関する報道は動物の専門家からみるとめちゃくちゃなことばかりで、そこから派生する議論など無意味でしかありません。
【2008年度から2025年度まで(2025年は9月まで)のツキノワグマによる人的被害件数】

以上、クマの被害について、もう少し正しい動物学とデータを用い報道してほしいと思います。
※2025年11月8日、ツキノワグマにおける被害件数のグラフを追記しました。
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